故郷でホテル

2017/06/27

*古いブログから(2011/08/06)

近々法事で里帰りすることになった。
夫と私は同郷で、互いの実家もそう遠くはない。
このことは、都合が良さそうでいて、実はそうでもなかったりする。嫁としてはやはり夫の家が優先、夫と共に帰郷すると、実家が近くて遠い…のだ。

しかし、そんな不都合も数年前からきれいサッパリ解消した。
なぜなら、夫も私も帰るべき家がなくなってしまったからだ。
いえ、実家は変わらずそこにある。あるけど、そこに滞在することができなくなってしまったのだ。


理由はそれぞれにある。

私の場合は、父親が亡くなったこと。
母は健在で一人暮らし、そして家も広い。
が、母は、娘が自分の家に滞在することを望まない。
当たり前の母親を持っている人には信じ難い話だと思うが、事実である。

そして、夫の場合は・・・両親が離婚した。
このことについては、またいつかネタにさせてもらうつもりだけれど、85歳と74歳での離婚。ギネスものではあるまいか。。

夫は悩んだ末に、中立の立場を貫き、どちらの家にも泊まらない、すなわちホテルに泊まることを選んだ。
そして元日は父の家、1月2日は母の家、というぐあいに、スケジュールを割り振り、公平に両親の元を訪ねた。ご苦労なことである。

しかし、それも長くは続かなかった。離婚当時すでに高齢であった義父は、離婚後わずか2年で他界した。そして現在は、義母が義父の家(夫の実家)に一人で暮らしている。


それでもやはり、夫は実家には泊まらない。
なぜなら、実家に義母が住まうことは、亡くなった義父が最も望まなかったことだから..。
そもそも離婚した義母には、義父の遺した家に住む権利はない。だが、子供たち(夫と妹)の情けで、住まわせてもらっている。
父親の気持ちをよく理解していた夫には、そこに自分たちも加わって、母親と一緒に団らんすることができない。亡くなった父親に対し、せめてもの義理を立てているのだと思う。


そんなわけで、故郷で毎度ホテルに滞在している。
初めの頃は、家はそこにあるのに…と、少々情けない気分だったが、慣れてしまえば、ホテル住まいも快適。嫁として嫁ぎ先に滞在することに比べれば、気が楽だったりする。
だが、長男である夫に帰るべき家がない…というのは、やはり相当気の毒なことだと思う。


Cat / orangeaurochs

私と夫が結婚した頃は、まだ義父母は仲のよい夫婦に見えた。あの頃のことを思い出すと、二人が離婚したことや、今の毒婦のような義母の姿の方がまるで悪い夢のようだ。いったいどこでどう歯車が狂って、夫の晩年はこんなに悪いことばかりが立て続けに起こらなければいけなかったんだろう。