公正証書遺言を作成した

2018/09/10
公正証書遺言を作った。私が死んだ場合、私のきょうだい全員に相続権がある。が、私は特定の姉一人に全財産を相続してもらいたいので、自分の死後に確実にそうなるよう、事前に手を打っておく..というわけだ。そう手間もかからず自分で手続きできるし、"お一人様"の多い今の高齢社会では、遺言書の必要性も増えてくるのではないかしら。





1. 公正証書遺言とは

法律上効力のある遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」という3つの方式がある。中でも、公正証書遺言は、公証役場において公証人によって作成されるので、最も確実に遺言を残す方法である。

・「遺言」について詳しくはこちら。→「遺言 | 日本公証人連合会



2. どこで作ることができるのか?

公正証書を作成できる公証役場は全国に約300カ所あり、自分にとって都合のよい所を選ぶことができる。
また、遺言者が出向けない場合には、公証人が自宅や病院などへ出張して作成することも可能である。

 ※「公証役場一覧 | 日本公証人連合会

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私の場合は上記の一覧で調べてみたら、居住する市内に2つの公証役場があることが確認できたので、両方に電話をかけてみた。すると、比較的近い同区内の公証役場は「まず無料相談に訪れるように」とのこと。
それに対し、もう一方は(ホームページもあって電話をかける前から印象もよかったのだが)、電話を受けた人に遺言書を作成したい旨を伝えると、その場で遺言の内容を聞き、手続きに必要な書類について教えてくれた。そして、それらが揃ったらいつでも営業時間内に来てくれればいい、と言われた。こっちが断然話が早い!家からの距離は多少遠いが、迷わずこちらを選んだ。
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《手続きの流れ》(以下は今回の私の場合の手続き)
① 電話で予約(この時に必要書類を教えてくれた)
② 面談と必要書類の提出
③ 公正証書案の検討(②,③は同日に行う)
④ 公正証書原本への署名捺印
  ②で印鑑証明書を提出した場合は実印を用意する。
  それ以外は認印(シャチハタを除く)でよい。

⑤ 手数料の支払いと公正証書正本・謄本の受取り(④,⑤も同日に行う)


・公証人について

《資格》
公証人は公務員であり、法務大臣が任命する。
守秘義務を負い、法務大臣の監督に服する。また、公証人には職務専念義務があり、兼職は禁止されているので、弁護士や司法書士などの登録は抹消しなければならない。

公証人は、司法試験合格後司法修習生を経て、30年以上の実務経験を有する裁判官や検察官、弁護士、および法務局長経験者から任命される。
1989年度は、全国530人の公証人のうち、判事経験者150人、検事経験者240人、法務局長など法務省職員OBが140人を占め、弁護士出身者は1人しかいない。

《報酬》
公証人は公務員だが、指定された地域に自分で公証人役場を開き、書記らを雇って職務を遂行する。国家から俸給を得るのではなく、依頼人から受け取る手数料が収入源の "独立採算制" である。手数料は公証人手数料令で定められている。当然、扱い件数の多い東京や大阪などの大都市では、年収3,000万円を超える公証人も多数存在する。

- - - Wikipedia「公証人」から抜粋 - - -

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3. 手続きに必要なもの

・本人の印鑑証明書:1通(3ヶ月以内のもの)
・本人の戸籍謄本:1通(3ヶ月以内のもの)
・相続人との関係を示す戸籍謄本:1通(3ヶ月以内のもの)
(私の場合は、姉と私の関係を示す父の除籍謄本)
・税務署からの固定資産税の通知書
・預金通帳のコピーやメモ

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上記のようなものが必要であるが、それぞれ遺言者と相続人の関係によって必要な書類も多少変わってくる。もしも、全くの他人に相続させたいときには、相続人になるその人物の住民票が必要だということだ。
実は私も、万が一姉がいなかったときのために「姉の子供へ」という記載を入れたかったのだが、そのためには姉の戸籍謄本(子供が記載されたもの)が必要である。
もちろん私も姉がいないという万が一を望まないが、姉にしても私が死んでの遺言なんていう話は好ましくないから、「公正証書遺言を作成するために戸籍謄本を取ってくれ」と頼んでも、当然「そんなものは作らなくていい」ということになる。...無理強いはできないよね。。
姉を煩わせず、私個人で手にはいる証明書といえば父の除籍謄本で、それによって証明されるのは姉との関係だけだ。仕方なく、姉の子供のことは記載されない、相続人は姉だけという遺言書を作成した。
今後もし本当に万が一姉がいなくなったときには、今回作成した遺言書は無効となるので、そのときには新たに姪を相続人とする公正証書遺言を作成し直さなければならない。

上記の必要書類を全て揃え公証役場へ行った。
予約がなかったことが少々心配であったが、受付で少し待たされただけだった。
応対してくれた事務員さん(?)に「姉に不動産を含む全ての財産を相続したい」こと、そして「相続執行人としても姉を指名したい」旨を伝え、さらに証人の手配も依頼した。




4. 相続執行人の指定と証人について

・相続執行人の指定

相続執行人は、その人のみで相続手続きを進めることができる。
例えば、私の死後に私の預金を下ろすには相続権利のある全員の印鑑証明が必要だったりして大変面倒であるが、公正証書遺言で姉を相続執行人と決めておけば、姉一人で私の預金を下ろすことができる。(相続執行人に指名されても、それを拒否することは可能である。)

・2名の証人

公正証書遺言の作成には2名の証人が必要である。公正証書が出来上がったら、その証人2名も同席し、内容を確認してから署名捺印する。
遺言者にとって第三者である成人であれば誰でも証人になることができるが、公証役場でも手配してくれる。その場合は一人につき「5千円」の料金がかかる。

遺言の内容、必要な書類、そして手続きにかかる費用がいかほどになるかを確認し、公正証書遺言の受け取りの日時を決めた。この日は木曜だったが、次の月曜には公正証書遺言を受け取ることができるそうだ。
当日は、私と公証人、そして公証役場が手配してくれる証人2人の全員で公正証書に署名捺印する。私は実印と支払いのお金を忘れないようにしなければいけない。

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5. 作成にかかる費用

公正証書遺言の料金は遺言書に記載される財産の額によって決定される。
また、証人2名への手数料10,000円(1人につき5,000円)も必要となる。そして、公正証書のコピー(公正証書謄本)1通につき750円がかかる。
全国どこの公証役場でも料金は同じである。

 ※「手数料 | 日本公証人連合会

《私の支払った費用の内訳》
①財産の価額に対する手数料(*以下の表を参照↓)
②証人の手数料(5,000円×2=10,000円
③公正証書謄本 2通分(750円×2=1,500円

公正証書遺言を受け取る当日。
この日は奥の部屋へと通され、私の後には2人の証人もやって来た。
初対面の公証人とあいさつを交わし、証人を紹介される。もらった名刺を見ると証人になってくれたのは司法書士さんとその事務員さんであった。

公証人が作成されたばかりの私の公正証書遺言を読み上げる。
その内容に間違いがないかを一つ一つ丁寧に確認していき、全てを確認し終えると、全員で署名捺印した。
公証人と証人とが退室したあと、料金を告げに来た事務員さんに、「公正証書は1通でいいですか?、もう1通いりますか?」と聞かれたので、もう1通お願いした。
追加の1通のために少し待ったものの、全てを終えても30分もかからずに公証役場を後にした。なんだかあっけなかった。


出来上がった「公正証書遺言」


これは私の手元にあるコピー(謄本)で、全員で署名捺印をした原本は公証役場で保管されている。保管期間は、原則20年と規定されている。が、今回作成した公証役場で尋ねたところ「半永久的に保管する」ということである。

私は2通受け取った謄本をそれぞれ、銀行口座やその他の(私が死んでから必要になる)個人情報をまとめたものと一緒にして封筒に入れ、1通は家で、もう1通は貸金庫(きょうだいのうち仲のよい3人で契約している)で保管してある。
そして、きょうだいには「もしもの時には開封するように」と伝えてある。

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2通を別の場所で保管するのは念のためだ。私に何かあったとき、おそらく最初に駆けつけることができるであろうきょうだいを私は信用していない。私の遺書をみつけても、その人はそれをコッソリ破棄するくらいのことはする..と思っている。
だから、封筒の表には「同じものが別にも保管されている」ことを明記してある。他のきょうだいには、私が遺言書を2通作ったことも、どこに保管しているかも知らせてあるのだから、この表書きは必要ないんだけどね。つまりそれは、その人がバカな事をしてまた人望を失わないように..という、妹からの最後の親切心というわけさ。



W 200206 01 / didbygraham

公式に認められる遺言書を作って、やれやれひと仕事終えた..ような気がしているが、それと同時に、遺言なんて所詮は「たられば」なんではないかな?..とも思う。
人生は思い通りにはいかないものだし、予定通りになんて行くはずもないことは、もう十分知っている。だけどそれでも、少しでも人に迷惑をかけないように、前もって手筈しておくことも必要よね。
まっ、ともかく重要な終い支度が一つ片づいたことは確かだわ。